任意整理とは

 裁判所が関与する「法的」整理に対して,債権者との間で,債務の弁済方法について個別の合意に基づいて債務を整理する手続きを,「任意」整理又は「私的」整理と呼ばれています。

任意整理を利用するには

 任意整理は,自己破産や個人再生といった法的整理とは異なり,法律に規定された要件はありませんが,債権者との間で,債務の弁済方法について個別の合意に基づいて債務を整理する手続きですので,債務者には,将来において安定した収入が見込まれることが前提となります。

 ただ,親族の援助や過払い金を原資として,債権者との間で,一括弁済の和解をする場合などには,特に収入要件は必要ではないかもしれませんが,任意整理の場合も,信用情報機関には自己情報として登録され,今後,消費者金融等からの借り入れができなくなりますので,やはり,最低限,安定した生活が維持できる程度の収入があることが必要だと考えます。もし,最低限の収入が確保できない場合には,任意整理手続の前に,又は並行して,生活保護等,収入面の手当ても必要かと思われます。

任意整理のメリット

 任意整理は,裁判所が関与する法的整理と異なり,各債権者との個別の和解による債務整理手続ですので,債権者の合意さえ得られれば,債務整理の方法について自由に決定することができ,手続等が法定されている法的整理の場合よりも柔軟な解決が図りやすく,また,債務整理の事実が周知されることがなく,会社的信用力の低下を招く可能性も低くなります。

 さらに,法的債務整理手続きにおいては,全債権者を相手にしなければなりませんが,任意整理においては,そのような制約はなく,一部の債権者とのみ任意整理することも可能です。しかしながら,最近では,任意整理の相手方である債権者から,借り入れの状況や他の債権者との和解内容,収入状況等について説明が求められることもあり,最終的に,一部の債権者との任意整理について債権者の合意が得られるかどうかは別問題です。

任意整理のデメリット

 任意整理においては,各債権者と個別に交渉を進めていくため,一部の債権者とは早期に和解が成立し,弁済を開始しながら,最終的に他の一部の債権者との合意ができず,法的整理に移行せざるを得なくなり,それまでの手続的,時間的なコストが無駄になってしまう危険性も存在します。

任意整理の手続概要

 債権者から取引履歴を取り寄せて,利息制限法所定の利率で引き直し計算をした上で,法的に支払う義務のある債務額を確定させることが,任意整理に限らず,債務整理の第一歩です。

 法的に支払う義務のある債務額が確定したら,債権者に対して和解案を提示しますが,和解案としては,『司法書士による任整理の統一基準』に従い,残元金を和解金として,これに対する遅延損害金及び将来利息については免除していただき,当該残元金について3年乃至5年で分割して弁済するといった内容となります。

 もちろん,少額債務については弁済回数を減らしたり,親族からの援助が得られたり,過払い金の回収が済んで弁済原資が確保されている場合には,一括弁済による和解案を提示する場合もあり,和解案は,債務者の事情によりケースバイケースです。

 『司法書士による任整理の統一基準』は,弁護士会の『クレジット・サラ金処理の東京三弁護士会統一基準』を基に作成されたもので,内容はほぼ同じで,従来は,ほとんどの貸金業者が,当該基準を尊重し,当該基準に従った和解案には応じてくれていましたが,最近では,当該基準に従った和解案に応じにくくなっており,任意整理による債務整理が困難となり,自己破産や個人再生といった法的債務整理手続をとらざるを得ないケースも少なくありません。

 

『司法書士による任整理の統一基準』

1.取引経過の開示
 当初の取引よりすべての取引経過の開示を求めること。
取引経過の開示は,金融庁の事務ガイドラインにも明記されており監督官庁からも業者に対し徹底することが指導されている。もし取引経過の開示が不十分な場合,和解案が提示できないことを通知し,監督官庁(財務局,都道府県知事)等へ通知する。
2.残元本の確定
 利息制限法の利率によって元本充当計算を行い債権額を確定すること。確定時は債務者の最終取引日を基準とする。
3.和解案の提示
 和解案の提示にあたっては,それまでの遅延損害金,並びに将来利息は付けないこと。債務者は,すでにこれまでの支払が不可能となり,司法書士に任意整理を依頼してきたものである。担当司法書士としては,債務者の生活を点検し,無駄な出資を切り詰めて原資を確保し和解案を提案するものであり,この残元本にそれまでの遅延損害金,並びに将来利息を加算することは弁済計画を困難ならしめる。したがって,支払いについては,原則として遅延損害金並びに将来の利息を付けない。

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