民事法律扶助とは

 民事法律扶助とは,平成16年4月に制定された「総合法律支援法」に基づいて,平成18年4月に設立された「日本司法支援センター(通称:法テラス)」が,資力の乏しい方が法的トラブルにあったときに,無料法律相談を行い,必要に応じて,法律の専門家を紹介し,裁判費用や弁護士や司法書士の費用の立替えを行う制度です。

 なお,民事法律扶助は,所定の研修を履修し所属会より推薦を受けたうえで,日本司法支援センター(法テラス)と民事法律扶助契約を締結した弁護士又は司法書士でなければ利用することができません。

民事法律扶助を利用するための要件

1 資力基準

 資力基準については,収入基準と資産基準の2つから判断することになります。まず,収入基準は,申込者及び同居の家族で生計に貢献している者の収入が,以下の基準を満たしていることを要します。

 
一般の地域
東京・大阪等生活保護一級地域
単身者
182,000円以下
200,200円以下
2人家族
251,000円以下
276,100円以下
3人家族
272,000円以下
299,200円以下
4人家族
299,000円以下
328,900円以下

 また,申込者又は配偶者が家賃や住宅ローンを支払っている場合には,上の基準に現実に支払っている家賃や住宅ローンの額を加算することができます。但し,加算できる家賃等の限度額は次のとおりです。

 
一般の地域
東京・大阪等生活保護一級地域
単身者
41,000円まで
53,000円まで
2人家族
53,000円まで
68,000円まで
3人家族
66,000円まで
85,000円まで
4人家族以上
71,000円まで
92,000円まで

 次に,資産基準は,申込者又は配偶者が保有する預貯金や有価証券,不動産などの資産を合算した額が,以下の基準を満たしていることを要します。

  
単身者
1,800,000円未満
2人家族
2,500,000円未満
3人家族
2,700,000円未満
4人家族以上
3,000,000円未満

 なお,単身赴任者や下宿している子供に仕送りをしている場合の収入等の算定方法や生活上必要性の高い資産の控除等,資力基準の判定には,さまざまな要因が考慮されます。

2 勝訴の見込みがないとはいえないこと

 民事法律扶助を利用するにあたっては,「勝訴の見込みがないとはいえないこと」が要件となっていますが,この場合の「勝訴の見込み」とは,訴訟を提起した場合に勝訴判決が得られる可能性がある場合に限らず,弁護士や司法書士が代理人につくことで,和解や調停,示談等による紛争解決の見込みがある場合も含まれます。

 また,自己破産事件においては,免責の見込みがあることを要しますが,免責不許可事由がある場合でも,裁量免責となる可能性がある場合にも,この要件を満たすものと判断されます。

 なお,法律相談援助については,この「勝訴の見込みがないとはいえない」という要件はありません。

3 民事法律扶助の趣旨に適していること

 民事法律扶助事業は,その公益性の高さから,政府の財政支出により実施されるものですから,民事法律扶助の申込みが,申込者の「正当な」権利の実現に「合理的に」資するものでなければ,援助をすることができません。

 たとえば,訴訟の目的が,申込者の報復的感情を満たすためだけのものであったり,極端な少額事件で,費用対効果の観点から援助になじまない場合や勝訴判決を得ても,相手方の資産状況等から回収の可能性がなく,申込者の利益とならない場合には,「民事法律扶助の趣旨」に適さないものと判断されます。

 また,立替費用について償還の意思を持たないものからの援助申込みも,民事法律扶助制度を乱用しようとする申込みですので,「民事法律扶助の趣旨」に適さないものと判断されます。

司法書士等の費用の立替とは

 民事法律扶助が決定されると弁護士や司法書士の報酬金を含む訴訟費用や裁判所に提出する自己破産申立書類の作成費用,任意整理手続費用等が立替えられます。具体的な立替え金額は,以下のとおりです。

手     続
実     費
報     酬
立替支出額
備   考
立替支出額
備  考
破産事件手続
 
17,000円
1.予納金は被援助者直接負担とする。
2.夫婦双方援助のときは,8,000円を加算してそれぞれに分割して支出する。
債権者20社まで
84,000円
21社以上
94,500円
とすることができる
夫婦双方援助のときは,双方合計債権者数の基準額に42,000円を加算し,それぞれに分割して支払う。
個人再生
 
20,000円
1.予納金は被援助者直接負担とする。
2.夫婦双方援助のときは,8,000円を加算してそれぞれに分割して支出する。
105,000円
夫婦双方援助のときは,42,000円を加算し,それぞれに分割して支払う。
任意整理
1社
2社
3社
4社
5社
10,000円
10,000円
20,000円
20,000円
25,000円
 
31,500円
42,000円
63,000円
84,000円
105,000円
 
特定調停
1社~5社
6社~10社
11社~20社
21社以上
25,000円
25,000円
30,000円
35,000円
夫婦双方援助のときは,双方合計債権者数の基準額に13,000円を加算し,それぞれに分割して支出する。
105,000円
147,000円
168,000円
189,000円
夫婦双方援助のときは,双方合計債権者数の基準額に63,000円を加算し,それぞれに分割して支払う。
過払い金請求
訴訟せず
1社あたりの回収額が198万円まで
 
15%+消費税
 
訴訟提起
1社あたりの回収額が198万円まで
 
20%+消費税
 

 なお,民事法律扶助制度は,助成金制ではなく,立替え制となりますので,援助開始決定後,原則として月額5,000円~10,000円ずつを償還しなければなりません。そのため,申込者が無職の場合等,償還能力が乏しい場合には,保証人をつけなければなりません。ただし,事情によっては,償還金額を減額したり,生活保護受給者等,特別の事情のある方については,償還を猶予してもらえる場合もあります。

自己破産について

個人再生について

任意整理について

特定調停について

過払い金請求について

事務所所在図