過払い金請求とは

 旧貸金業法第43条は,利息制限法の例外として,法定の要件を満たした場合に限り,出資法に定める範囲内において有効な利息の弁済とみなす旨を定めているが,実務上,裁判において当該貸金業法に定める要件を満たしているものと認められることはほとんどありません。

 そのため,貸金業者との間で,長年にわたって,利息制限法所定の利率(15%~20%)を超える利率に基づいて,継続的な借り入れと返済を繰り返して場合には,利息制限法所定の利率に基づいて引き直し計算をすると,すでに借入金の元本を完済し,それ以上に金銭を支払っているケースも少なくありません。そして,この借入金を完済した後に支払った金銭を,過払い金と呼び,本来は支払い義務のない金銭ですので,借主は貸金業者に対して,当該過払い金の返還を請求することができます。

過払い金請求をするには

 過払い金を請求するためには,まず過払い金の正確な額を特定する必要があります。そのためには,いついくら借り入れをして,いついくら返済したかを把握しなければなりませんが,ほとんどの借主は,契約書や支払明細書等,貸金業者との取引内容を明らかにする資料を所持していません。

 そのため,まず,貸金業者に対して,借主との取引内容の記録(取引履歴)の開示を求める必要があります。以前は,大手の貸金業者も取引履歴の開示には消極的でしたが,現在では,ほとんどの貸金業者が取引履歴を開示してくれます。但し,取引履歴の保存期間について,一部の貸金業者が独自の見解を主張し,既に破棄したものとして,一部しか開示しない(開示できない)ケースもあります。

 こうして,貸金業者から開示された取引履歴をもとに,引き直し計算をした結果,過払い金は生じているかどうかを確認します。

過払い金請求と引き直し計算方法

 利息制限法に基づく引き直し計算の方法については,種々の法律問題が存在しますが,通常,パソコン上で引き直し計算ソフトを使って,計算します。なお,一般的な引き直し計算ソフトとして,アドリテム司法書士法人さんが公開されているフリーソフトをご紹介します。

 http://homepage1.nifty.com/office-toyama/download/download.htm

 引き直し計算の方法として,最も重要なことは,取引の中断があるか否かです。取引の中断とは,基本契約を一度解除し,その後一定の期間を経て,再契約した場合のことを言い,基本契約の継続中に単に債務を完済しただけの場合や基本契約を書き換えただけの場合は,ここで言う取引の中断には当たりません。

 そして,この取引の中断がある場合,中断の前後を通じて,一連一体の取引とみなすか,前後の取引を個別の取引として扱うかによって,過払い金の額が大きく変わってきます。最高裁は,中断の前後の取引内容や中断期間の長さ,カードの返却の有無等を勘案して判断すべきとし,判断の指針を示してくれていますが,どの程度なら取引を一連一体としてみなすべきか否かの基準は示されておらず,結局,訴訟を提起して,裁判所の判断を個別に仰ぐしかありません。

過払い金請求と消滅時効

 最高裁は,過払い金返還請求権の消滅時効について,特段の事情がない限り,過払い金が発生した時点ではなく,基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点,すなわち,基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引の終了した時点から進行するものと判示しました(最高裁判所平成21年1月22日判決)。

 なお,借入金債務の発生が見込まれなくなった時点,契約の終了した時点がいつなのかということについても争いがないわけではありませんが,多くの裁判例では,最後に取引を行った日から消滅時効は進行するもとの判断されているようです。

過払い金請求の手続概要

 引き直し計算の結果,過払い金が生じていることが判明した場合には,貸金業者に対して,過払い金の返還を請求することになりますが,訴訟を提起せずに解決しようとするならば,過払い金の1割から2割で和解せざるを得ないのが現状で,通常,訴訟を提起せずに解決することはありません。

 ですから,過払い金が生じていることが判明した場合には,直ちに,過払い金返還請求訴訟を提起し,裁判と並行して,貸金業者と和解交渉を行う事になりますが,最近では,訴訟を提起した後でも,裁判外での和解を期待することは難しく,判決を得て,執行手続までしなければ支払ってくれないケースも珍しくありません。

 なお,過払い金返還請求訴訟は,過払い金の額が140万円以下の場合は,借主の住所地を管轄する簡易裁判所に,140万円を超える場合は,借主の住所地を管轄する地方裁判所に提起します。

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